死は救いとは言いながら、そうは悟りきれぬものである。
人は、自然の悪を知ることを学んで死を軽蔑し、 社会の悪を知ることを学んで生を軽蔑する。
死ぬことはなんでもないが、 この世と別れるのが僕には辛い。
人類はまだ未成年であり、死は一つの未成年者誘拐である。
命というものは、はかないからこそ、 尊く、厳かに美しいのだ。
いくら長生きしても、最初の二十年こそ人生の一番長い半分だ。
死のうと思っていた。 今年の正月、よそから着物一反もらった。 お年玉としてである。着物の布地は麻であった。 鼠色の細かい縞目が織り込まれていた。これは夏に着る着物であろう。 夏まで生きていようと思った。
死だけが唯一の本当の締め切りである。 生きている限り、学ぶべき事が未だある
生きるべきか、死すべきか。それが疑問だ。
To be, or not to be : that is the question.
生きたいと思わねばならない。 そして死ぬことを知らねばならない。
話好きが暖炉に背を向けるように、 人は死と背中合わせになっている。
人間は心の底ではまったく死を嫌悪していない。 死ぬのを楽しみにさえしている。消えてゆくランプに苦しみはないのである。
私は生きているときに、死以外のあらゆるものに対して備えをしていた。 今、私は死なねばならぬ。そして、まだなんの備えもない。
私が死んだとき、一匹の蝿がうなるのを聞いた。 部屋の中の静寂は、嵐の高まりの間の大気の静寂のようだった。
誰でも死ななくちゃいけない。 でも私はいつも自分は例外だと信じていた。 なのに、なんてこった。
賢者は、生きられるだけ生きるのではなく、 生きなければいけないだけ生きる。
死ぬということは、生きているよりいやなことです。 けれども、喜んで死ぬことが出来れば、くだらなく生きているよりは幸福なことです。