死のことは考えるに及ばない。 死は我々が手を貸さなくても我々のことを考えてくれているのだから。
男どもは結婚を神聖だなどという。 それこそ神をも人をもあざむく台詞というものだ。 そしていつでも、その台詞の迷惑をこうむるのは、 純潔無垢な、理想の女性とでも言うべき乙女なのだ。
「君は会うたびに美しくなる」 「会ったのはついさっきよ」 「その間に美しくなった」
愛情のない結婚は悲劇だ。 しかしまるっきり愛情のない結婚よりいっそう悪い結婚が一つある。 それは、愛情はあるが片一方にだけ、という場合だ。
もしあなたが約束の時間より早く着いたら、あなたは心配性である。 もし遅れてきたら挑発家、 時間どうりに来れば強迫観念の持ち主。 もし来なかったら、知恵遅れという事になる。
ほんとうに誠実に生きるためには朝、決めたものを、 夜、NOと言わざるを得ないこともあるかもしれない。
恋愛は若いものの幸福な特権であり、老人の恥辱である。
「時」をまねるがよい。「時」は一切のものをゆっくりと破壊する。 「時」はおもむろに浸蝕し、消耗させ、根こそぎにし、引き離す。 だが、ひったくることはない。
幸福の最も大きな障害は、過大な幸福を期待する事である。
恋する男からみれば、プレゼントは自分の力を確実にする一つの手段である。
男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである。 そしてまた、男は女を愛するが、それは遊びのなかで最も危険なものであるからだ。
この世界は、大勢の人に愛読される絵本のようなものである。 ページをめくって一つ一つの絵を楽しむが、原文の一行もみんな読みはしない。
人と人との友情は、 賢者でも結ぶのが難しいのに、 愚者はあっさりほどいてしまう。
恋愛とはなにか。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。
女は男より簡単に泣く。 しかも自分を泣かせたことについて男より長く覚えている。
人は幸福を探し始めると、たちまち幸福を見つけられない運命に陥る。 しかしこれには不思議はない。 幸福とは、あのショーウィンドウの中の品物のように、 好きなものを選んで金を払えば持って帰れるというものではない。
お前の唇は苦い味がした。 あれは血の味だったろうか?……いや、ことによったらあれは恋の味かもしれない。 恋は苦い味がするというから。
報いられぬ恋は霜にうたれてしおれた樹木に似ている。