私も青春のことを懐かしみ、若い人を羨むことがあるが、 しかし、もう一度若くなって世の中を渡ってこなければならぬと思うと、 何よりも先に煩わしい思いがする。
「時」をまねるがよい。「時」は一切のものをゆっくりと破壊する。 「時」はおもむろに浸蝕し、消耗させ、根こそぎにし、引き離す。 だが、ひったくることはない。
幸福の最も大きな障害は、過大な幸福を期待する事である。
恋する男からみれば、プレゼントは自分の力を確実にする一つの手段である。
男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである。 そしてまた、男は女を愛するが、それは遊びのなかで最も危険なものであるからだ。
この世界は、大勢の人に愛読される絵本のようなものである。 ページをめくって一つ一つの絵を楽しむが、原文の一行もみんな読みはしない。
人と人との友情は、 賢者でも結ぶのが難しいのに、 愚者はあっさりほどいてしまう。
A弦が切れたら残りの三本の弦で演奏する。これが人生である。
恋愛とはなにか。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。
女は男より簡単に泣く。 しかも自分を泣かせたことについて男より長く覚えている。
人は幸福を探し始めると、たちまち幸福を見つけられない運命に陥る。 しかしこれには不思議はない。 幸福とは、あのショーウィンドウの中の品物のように、 好きなものを選んで金を払えば持って帰れるというものではない。
お前の唇は苦い味がした。 あれは血の味だったろうか?……いや、ことによったらあれは恋の味かもしれない。 恋は苦い味がするというから。
報いられぬ恋は霜にうたれてしおれた樹木に似ている。
世界中の誰もが自分を称賛しても、 私は一人静かに満足して座っている。 世界中の誰もが私を見捨てても、 私は一人静かに座っている。
男の人生にはいくつかの節目がある。 童貞の喪失、結婚、子供の誕生、好きな女の笑顔。
最初に自殺しようと考えた人間は、人生を永遠に侮辱してしまったのである。 人生は大いに気を悪くしている。
「今が最悪の状態」と言える間は、 まだ最悪の状態ではない。